青春時代を思い出したい方に。友達は無駄である/佐野洋子

こんにちは、アオです

あのさあ、私たちやることがなかったんだよね。

だから考えると、すごい遠い友だちのうちまで歩いて遊びにいったよね、三十分とか四十分とかさ。夕方になってかえって来る道すがらとか、すごく考えたり感じたりする時間っていうものがあったような気がするのね。おつかいに行く道すがら考えるとか、なんにもしない時間がけっこうあったんだよね。今、そういう時間ないじゃない、テレビをすぐつけてしまうとか。だいたいトコトコ歩いてなんか行っても車はブーブーだし、昔みたいにひょろひょろ考えてなんか歩けないよね。

中学生くらいのわたしは、暇がたくさんありました。

とくに、気持ちの暇、というか。

美術部だったので放課後は絵を描いて過ごし、ときどき校庭で運動部の姿を眺めたりして。

今では考えられない距離を歩いて、友達の家に行って、帰りはせっせと足早に、家までの道でいろいろなことを考えたことを思い出しました。

塾の帰り道とか、友達と遊んだあとは車の通りが少ない道もあって。

一人の帰り道は心細いのと、何か起こるのかもしれないという不可思議なわくわくと、明日やそれ以降についてぼうっと考えたり。

子どもってそういう生活をしていたなあと思うんです。

そして、子どもの頃のような生活が一生続くとしたらちょっとつまらないような気もします。

佐野さんは著書で、無駄という言葉を決してネガティブな意味で使っていません。

むしろ無駄こそが人生に必要なのだと教えてくれます。

理路整然としていたらつまらない。

昔は友達付き合いでこんなことで悩んでいたな、とか、子どもってこういう生活をしていたよね、ということをしみじみ感じられる本です。

そして、自分自身がとっくに大人になってしまったということも同時に感じられます。

そして、今はすっかり忙しい大人になってしまったということも。

暇をもて余しているときって、退屈でつまらないんですけれど、忙しいときって退屈に憧れるんですよね。

中学生、高校生を対象にした本のようなのですが、大人が読んでも楽しい本です。